『君にしか聞こえない』〜CALLING YOU〜 

(角川スニーカー文庫)

の感想。



乙一さんの名前を知ったのは、
『コミックビィストリート』という漫画雑誌に
付録漫画として付いていた乙一さん原作の作品
『暗いところで待ち合わせ』の漫画版を読んだことが
きっかけでした。

漫画を読んで「この作品の原作が読みたい!」と思い、
本屋に行って探してみると、見つけたのがこの
『君にしか聞こえない』という短編集でした。
『暗いところ…は』残念ながら見つかりませんでしたが
『君にしか…』の、綺麗なイラストに強く惹かれて
購入しました★(^−^)

そして…乙一さんにはまったのです。



『CALLING you』

乙一さんの書いた小説で一番好きな作品です。

友達のいない主人公の女の子が、
頭の中の空想で創り出した携帯電話。
その携帯にある日電話がかかってくる
電話の相手は主人公と同じように
頭の中に携帯電話を創った少年からだった…。

空想で作り上げた電話が現実の誰かに繋がる。
自分から電話がかけれるのはたった一人の特定の人だけ。

ただし、現実の携帯電話と違って
少年と少女には1時間のずれがある。
お互いの頭の中では同じ時間が流れているのに
現実では少年が主人公より一時間過去に居る。
主人公が少年より一時間未来に居るとも言える。

この、一時間が、物語の後半に起こる出来事によって、
物凄く重く、悲しくて、暖かい時間になるのです…。

これを読んだ時、あまりの切なさに泣いてしまいました。
とにかく悲しくて悲しくて、でも心が凄く暖かくなる作品です。
主人公と少年の、お互いを想う気持ちが
本当に切なくて…。

特に…「気にしていたほどのニキビではないね」という言葉。
あれに、もうぶわーーーっと泣いてしまいました。
自分が凄く気にしている事を、好きな人に
あんな瞬間にこんな風に言われると…。
どうしようもないくらい嬉しくて悲しいですよね…。

乙一さんが『切なさの達人』と呼ばれている訳が
身に染みて解りました。

この作品ドラマ化して欲しいですっ!
ラジオドラマでも良いかも…♪



『傷』


主人公の男の子のクラスに転向してきた
心優しい美少年アサト君には、
他人の傷を自分に移してしまう不思議な力があった…。
というお話。
これはもう、設定だけでわかるかもしれませんが…
可哀相すぎます!!!(泣)

それでも、最後に主人公によってアサト君は
救われるのでほっとしましたが…。

そして、このお話、主人公の名前が最後まで出てこないのです。
その事に読み終わるまでちっとも気付きませんでした(^−^;)
こういう書き方できるって凄いなぁ。と感嘆しました。

生きていくのは悲しくて辛いけれど、
それでも暖かい救いは、ある。
そんなお話でした。



『華歌』


これも、主人公の名前が出てこない作品です。
これは、読んだ後に「やられた〜〜〜!」と
想った作品です。(笑)

恋人を亡くし、心の傷が治らず、入院中の主人公は
ある日病院近くの雑木林で、歌を歌う小さな花を見つけた。
つぼみだった花は徐々に開き、
花の中にはなんと少女の顔(頭部だけ)が…。
主人公は、同室の患者二人と共に、
その花に魅せられ、華歌に癒されてゆく…。

という、ちょっと不思議怖いお話ですが…(汗)
美麗な挿絵イラストによって、気持ち悪さは
緩和されているような気がします。(^−^;)

この作品の面白い所は、その挿絵も「騙し」に
加わっている事です。
「騙し」というのは主人公の性別の事。
この作品は主人公以外の登場人物を名前で表現していて
主人公やお見舞いに来る主人公の幼馴染、同室の患者さん達
に「彼」や「彼女」とか、性別を表す言葉が付かないのです。

そしてイラスト。主人公が幼馴染と話している時に
最初の挿絵が入るのですが、それが男の人なのです。

おまけにそれぞれの口調が敬語だったり、
男っぽかったりどちらとも取れるしゃべり方だから、
主人公&患者さん達が男で、幼馴染の人が女だと思っていました。(^w^;)

これが逆だったと判るのは、お話の最後。
初めて主人公が女の人で、幼馴染が男の人だと
判る文章が書かれているのです。
知った時は驚きました!(O◇O;)

でも逆に何か騙されちゃった事に妙な喜びを感じました(笑)




以上、『君にしか聞こえない』の感想でした♪(^w^)
ここまで読んでくださってありがとうございました〜☆m(__)m


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